ピェキャ!

友達と電話してた。
立ってると疲れるので、椅子に座った。
その拍子に、ひじにカップを引っかけて落とした。


ピェキャ!


何とも形容しがたい音を立てて、カップの取っ手が壊れた。


それは、嫁さんが実家から持ってきた
猫のイラスト付きのカップ


僕も付き合ってた頃、よくこれにコーヒーを入れてもらって
2人で飲んだものだ。


そう、これは嫁さんの超お気に入り。

素直に謝った。


あやや・・・まあ・・・しょうがないわね」


その落胆を表に出さない、いつも気丈な嫁さんの言葉に、僕は飛び出した。


「待ってて!!」


そう言い残して。
泣きそうになりながら、自転車を飛ばして10分!
工具の専門店に直行!
帰りにはヒザが笑いながらも、
なんとか陶磁器用ボンドを買ってきた。


「そんなの、いいのに」


はぁはぁ・・・と、息を切らす僕にそう言った嫁さん。
でも、目は嬉しそうに微笑んでいた。


「どう?大丈夫そ?」


嫁さんが軽く言う。
しかしその心は本当に心配しているに違いないッ!!


3つに割れた取っ手を、慎重に慎重にくっつける。


・・・


「む、完璧ちゃうか」

僕はそう言うと嫁さんに差し出す。
幸い、ほとんど欠けがなく見事に接着された。


嫁さんは、カップを手に取り、接着部をしげしげと眺め、
素直な感情でこう言った。


「へぇ、すごいねー!」


ちょっと誇らしげな僕。嫁さんは言葉を続けた。


「陶磁器用のボンドって。」


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