救われない物語

今朝、通勤で考えた陰鬱なお話。
読むと落ち込むので、嫌なら読まないでね。


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彼は結構な歳なのに、平社員だった。


毎日毎日、会社に出勤する。
上司に叱られるためだけに。


そうやって何年かすると
彼はこう思い込むようになった。


全て、俺が悪いのだ。
俺が至らないのだ。
俺は他人に劣るのだ。
俺は何も出来ない男なのだ。


妻や同僚は言う。


がんばれ!


しかし、そんな言葉は
彼の中では、もはや毒でしかなかった。
その言葉を聞くと
吐き気とめまいがした。


思うようにならない自分自身。
いつもギリギリの崖っぷちで
立っているような感覚。
焦りと不安が彼の心を支配し、蝕んでいた。


その日もなんとか耐えて
家に帰ると、妻が仕事を持ち帰って、している。
彼女は有能な編集者なのだ。
パソコンに向かい、ヘッドホンをして、集中している。
挨拶もない。
コンビニ弁当の残骸が、彼女専用のゴミ箱に
無造作に突っ込まれている。


彼女も働いている。
それもよく解っている。


彼は何も言わず、いつものように
自分で買ってきたコンビニ弁当を食べた。


次の日、彼は上司に辞表を出した。
仕事から
逃げ出したのだ。


そして、当然のように妻に離婚された。


「そんな人だとは思わなかった」


それがどういう意味で、彼女の口から出たのか
理解できなかった。


彼は、しばらくは何もかも自由になった気がした。
だが、この社会に生きる以上、本当の自由などないのだ。
生きること、全てにお金がいるのだ。


公園などでは暮らしたくない。
彼は、くだらないプライドだけは高かった。


全ての財産を使い果たした時、彼は自ら命を絶った。
今度は生きる事から
逃げ出したのだ。


しかし。
彼は永久に苦しみ続けるのだった。
なぜなら、そこは彼の望む世界ではなかったから。


本当の自由は、あった。


そして、
それ以外、
一切、
何もなかった。


闇と氷に閉ざされた世界。


もはや、ここから逃げるすべはない。
彼は、自分の生きていた頃の幻想に
涙し続けるしかないのだった。
永久に。


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(´Д`lll)うちゅ