車窓から

電車で帰る途中、僕の中でヒットした出来事。


・駅でどこかのおばさんが、ケータイで話している。


「あー、うん、わかったから、な、
焦らんでええから、ゆっくり
急いでしゃべれ!
と言っていた。



・電車に乗って席に座ると、締まりかけのドアに
男が飛び込んできた。


その男は、なぜか口をすぼめて、四肢の全てが内側に向くように動く。
僕の隣に座ると、女物の香水の香りがした。
とてもKABA.ちゃんに似た人だった。




・目の前に年配の男が座っている。


腕を組み、股と口を開け、頭は後ろのガラス窓に
もたれかけて眠っている。

特に気にせず、ぼんやりとその男を見ていると、ふと気づいた。


地下鉄の蛍光灯が発した、光の軌跡。
それが、彼の頭の表面をきらりと反射して次々と流れて行っている。


ある意味、儚く美しい光景だった。